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暮しっく"
赤峰さんが
朝4時半の散歩道から
あなたに伝えたいこと
撮影・文/山下英介
いわゆるファッション業界人やファンの方はご存知かもしれないが、赤峰さんはとんでもなく早起きだ! しかも毎朝、夜が明ける頃から多摩川沿いを1〜2時間ほど散歩して、その成果としての写真をLINEで送ってくれたりする。実をいうと筆者はマスコミ業界人にありがちな夜型人間で、その時間は確実に睡眠中なのだが、いつも感心してしまう。赤峰さんの若々しさとお洒落さの秘密は、もしかしたらこの時間にあるのでは?と・・・。そこで今朝は一念発起! 筆者にとっては深夜となる朝4時半に多摩川で赤峰さんと待ち合わせして、一緒に散歩してみることにした。意外にもハードな道のりに30分で足がガクガクになった筆者をよそに、涼しい顔で1時間を歩き切った赤峰さんが、ぼくに教えてくれたこととは?
子供の頃から早起きでした。
今でも早寝早起きが習慣で、夜は10時には寝て、太陽の昇る時間に起きています。だいたい夏なら4時、冬場は5時くらいでしょうか。もはや目覚ましを使う必要もありません。ラジオ体操の前に流れる「新しい朝が来る」という言葉のように、御来光を浴びながら、昨日と違う朝を感じたいのです。
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子供時代の縄張りは、もっぱら目黒の碑文谷公園。昔から外で遊ぶのが大好きでしたが、10年ほど前から、早朝は自宅の近所にある多摩川沿いを散歩するようになりました。大好きな映画監督のアンドレイ・タルコフスキーが〝水〟や〝光〟をテーマにした作品群を撮り続けたように、私も空と太陽、木と水を生きるテーマにしているのですが、多摩川は東京の近郊にありながら、そのパワーを感じるのにもってこいの場所だと思っています。これからは台風シーズンですが、嵐が過ぎ去った次の朝に増水した跡を見に行って、折れている枝を拾いに行ったりするのもすごく好きです(笑)。
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私は東京生まれですが、まだ田園風景の広がっていた頃の目黒で、土にまみれて遊びながら育ちました。マンションに住んだこともありません。自然に近いところに存在する安心感が、私には必要なのでしょう。もちろんそうした生い立ちや暮らしは、自分がつくるものにも反映されていると思います。
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空の色ひとつとっても、白い雲もあるし、薄いグレーの雲もある。そして雲と雲の隙間にある薄いブルーの空の色や、夏場の強烈な青・・・。それらは私が色を捉えるときの、ひとつのキャンバスなんです。光の美しさも順光と逆光によって全く違うでしょう? カメラマンさんならそれらをスタジオで表現しますが、私はそれを自然から学び、洋服へと落とし込むんです。10分後には全く調子の変わってしまう自然の色の調子を、自分の視覚で捉える。そうした学びがないと、調子が出ないんですよね。
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野鳥スポットとしても知られるこのエリア。アオサギ、トビ、ムクドリ、モズ、メジロなど多彩な鳥を観察できるそうだ。
最近はトランクショーで地方に行くことも多いのですが、私はスタッフがまだ寝ている間にひとり起きて、タクシーに乗って夜明けの海や山に行ってしまう。それが自分にとっての視覚のビタミン補給でもあるのです。
そんな散歩の途中で植物や、そこに集うチョウチョや虫などを見ていると、驚くほどにきれいな色だったりしますよね。私にとっては、それらの色合わせは、いわば色見本帳。「セミの抜け殻のアメみたいな茶色は靴でいえばこのあたりかな?」なんて、変換してしまう。その美しさの秘密は、ひとことでいうと〝みんな生きている〟からなんです。生きているものはすべて水を求めているし、水があるからこそ、人間だって健康でいられる。そういう有機的なものが私は好きですね。
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普段は気にも留めなかった雑草が、とても美しく見えてきた早朝の散歩道。赤峰さんは花屋の花よりも、野に咲く花や草木にこそ価値を見出している。
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今の時代、ネットの深みにハマって気づいたらいつの間にか深夜○時・・・なんてこともあるかもしれませんが、やっぱり自分の生の目で見て、体験したものものが一番重要です。今度出版する写真集も、できることなら紙漉きからやりたいくらいだな。それは無理なの?(笑)
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赤峰さんの写真集については、こちらの記事もご一読ください。