2024.12.21.Sat
今日のおじさん語録
「なんのために生まれて来たのだろう。そんなことを詮索するほど人間は偉くない。/杉浦日向子」
お洒落考現学
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連載/お洒落考現学

鴨志田康人と坂田真彦の
〝はじめてのコラボ〟。
ぼくたちがつくった
4着のコート(後編)

撮影・文/山下英介

メンズファッション業界の2大キーパーソン、鴨志田康人さんと坂田真彦さんによる、コートをテーマにした初対談&コラボレート。後編ではふたりがディレクションを務める、Paul StuartとSANYOCOATのコラボレートコートの全貌を初披露。しかもその着こなし方も提案してもらった。それでもスマホの画面だけじゃ、このコートのすごさは語りきれない! ・・・というわけで、巻末にはとっておきのイベントの情報もあるので、最後まで読んでね。


英国ツイードで
表現した
フレンチシックって?

前編の対談で語られていたとおり、「フレンチシック」というテーマを掲げながらも、ふたりがウールのコートをつくるために選んだ生地は、スコットランドの名門生地メーカー、ラバットミル社のツイードだった。これは「フランスっぽい装いとはコーディネートの妙から生まれる」という、鴨志田さんの考えに基づいたチョイスだ。はっきり言ってどちらもかなりヘビーな生地だけど、生地のもつオーラと仕立て映えは圧巻! 袖を通す喜びと着こなす楽しさを、これほど味わえるコートはほかにない。


ラバットツイードの
トレンチコート

デザインのベースはSANYOCOATの誇りが凝縮したモデル『100年コート 極KIWAMI』。今や英国でもなかなかできない本格的な仕立てと嗜好性の高いディテール、美しいシルエットとが融合した、まさに本物のクラシックトレンチだ。着丈はLサイズで120㎝。価格は¥363,000(税込)。

こちらはラバットミルの「カークトン」という生地を使ったトレンチコート。どこか70年代っぽい雰囲気を感じさせる色柄と、トレンチ本来のクラシックなデザインとの組み合わせは、着ごたえ満点。着丈はLサイズで120㎝と、かなり長め。優雅にフレアするAラインのシルエットは、SANYOCOATのパターンと技術力の賜物だ。鴨志田さんはこのコートに〝サンジェルマンスタイル〟をイメージしたと言ってたけど、さあ、ぼくたちはどうやって着こなそうか!? 

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ここがすごい!
英国貴族が愛したラバットツイードのどっしりした風合いはもちろん、縫製やディテールひとつとっても迫力満点。背裏にはグリーンのサテン、胴裏にはネイビーのフランネルを使った裏地も一見の価値ありだ。ブライドルレザーのバックルや本水牛のボタンに触れているだけで気分が高揚してくる。これは着てみたい!


鴨志田さんならこう着こなす!
エンジのドットスカーフにネイビーブレザー、バギーシルエットのペインターパンツにパープルのスニーカー。鴨志田さんが「これぞサンジェルマンスタイル!」と語るお気に入りのコーディネートがこちら。「トラウザースはグレーフランネルでもいいけど、バギーじゃなきゃダメ(笑)」とのこと。


坂田さんならこう着こなす!
レマメイヤーのアルパカニットやグレーフランネルのトラウザース、グッチのビットローファー。坂田さんが80年代半ば頃に憧れていた東京のセレクトショップの空気感を、ちょっとだけ盛り込んだスタイルだ。


ラバットツイードの
ライディングコート

ラバットミル社の「エトリック」はハンティングの用途に用いられることの多い生地で、撥水加工が施されている。こんなヘビーな生地を軽やかに着こなす鴨志田さんもさすがだが、実はその仕立てにも秘密が隠されている。着丈はLサイズで117㎝。価格は¥363,000(税込)

いかにも鴨志田さんらしいバルカラーのコートは、ツイードらしいグリーンにパープルのチェックを効かせた、ラバットツイードで仕立てたもの。目付けはなんと640gもあるが、コートの重量を体全体に分散させるSANYOCOATならではのパターン設計と縫製のテクニックによって、そこまで重さは感じさせず、どこか軽妙なムードも漂わせている。
ちなみに、まるでビスポークしたコートかのように、鴨志田さんの体に柔らかくなじんでいるシルエットの秘密は、台襟をバイアスにとって職人が手縫いで仕上げていること。これによってオーバーサイズで着てもきれいなAラインのシルエットが生まれるわけだ。

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鴨志田さんならこう着こなす!
ビスポークのグレーフランネルスーツにタブカラーシャツ、ペイズリータイ、スエードキャップトウ・・・。クラシックだけど英国的というよりは、どこかフランスっぽいムードを漂わせているのは、コートの柄を生かした粋な色使いの賜物か。鴨志田さんにとって、マフラーとはコートを着るときの必需品。コートの色を拾いつつ、ピリッとコントラストを効かせている。


ここがすごい!
ぐにゃりと湾曲した襟まわりの柄は、職人による丁寧なクセ取り(アイロンワーク)の証。もともと乗馬コートをモチーフにしているので、バックには深いインバーテッドプリーツが設けられており、これも優雅に広がるAラインシルエットの秘密なのだ。裏地は真っ赤なサテンと、ベージュのフランネルとのコンビネーション。貫通ポケットの仕立ても、惚れ惚れするほど美しい。



坂田さんならこう着こなす!
濃色のヴィンテージジーンズをタイドアップで合わせているけれど、ただのシックな着こなしじゃつまらない。あえてコートのチェック柄にジャケット(ちなみにエルメス!)のチェック柄をぶつけて、さりげない〝毒気〟を漂わせているのだ。デイヴィッド・ホックニーやアンディ・ウォーホールみたいなアーティストがこのコートを着るなら、きっとこんなふうにコーディネートするはず。

着るほどに味が出る!
限界高密度の

コットンコート

お次に紹介するのはコットンコート。坂田さんが所有するヴィンテージをベースに打ち合わせを重ねながらつくった2モデルのコートは、今や古着屋さんでもなかなかお目にかかれない迫力に、思わず圧倒されてしまう。その最大の秘密は「マスターシールド」というコットン生地にある。繊維を限界まで高密度に織り上げたこの素材は、コットンならではの通気性は確保しているのに、繊維を膨張させて水は通さないという、天然の防水調湿生地。・・・そう、英国空軍(RAF)がかつて使っていた〝アレ〟を復刻させた生地である! 機能が優れているだけじゃなくて、高密度コットンならではのナチュラルな光沢感や、着込んだときの風合いも、また素晴らしいんだ。
そんなこだわりの生地と、SANYOCOATが誇る仕立てとが融合したコートは、クローゼットにあるだけでも嬉しいし、これを着て外出できる日はきっと楽しい。ぼくたちも、そろそろこんな〝本物〟を手に入れてもいい頃なんじゃない?


マスターシールド生地の
トレンチコート

生地のハリ感とドレープ感がとにかくすごいトレンチコート。定番の『100年コート 極KIWAMI』と較べると、よりミリタリーテイストを濃厚に漂わせている。着丈はLサイズで120㎝。価格は¥220,000(税込)。

『100年コート 極KIWAMI』をベースにしたトレンチコートは、1枚袖のラグランスリーブで、オーバーサイズで着てもきれいなAラインシルエットが出ると大好評。こちらは英国空軍由来の生地「マスターシールド」や尿素ボタン、取り外し可能な中綿入りサテンライナーなどをあしらって、定番よりミリタリー色を強めたモデルだ。
とはいえ英国軍と米軍の要素を混在させるようなミックス感のなせるわざか、なぜだか無骨すぎないのがこのトレンチの特徴。つまり、色んな着こなしに合わせられるってこと。鴨志田さんのようなフレンチっぽいスタイリングはもちろん、坂田さんのようにヴィンテージデニムと合わせたっていい。たぶんデザイナーズの服にだってハマるだろう。これほど料理しがいのあるトレンチは、ほかにはないと思う!

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ここがすごい! 
トレンチ本来のミリタリーなディテールと、英国空軍由来の生地が放つ別格のオーラ。写真で見るだけでも一目瞭然だけど、実物はもっとすごいよ! これを着込んでいったら10年後にはどんな風合いに育つんだろう?なんて想像するのもまた楽しい。米軍のミリタリージャケットを彷彿させる中綿入りライナーひとつとっても、素晴らしい完成度だ。



鴨志田さんならこう着こなす!
オフホワイトのニットに合わせたトラウザースは、70年代もののツイード製〝パンタロン〟。今は完全にバギーやフレアパンツが気分だという。ツーブリッジのサングラスなんかもハマりそうだ。これをばっちりキメるなら足元はシャープなジョッパーブーツあたりが正解なんだろうけど、鴨志田さんが提案してくれたのは、あえてのワラビー! 「ほどよくズラすのが気分だよね」とのこと。


坂田さんならこう着こなす!
英国由来のトレンチに、ちょっとだけU.S.アーミーのテイストをミックスしたこのコート。それだけにヴィンテージデニムとの相性は抜群だ。坂田さんは貴重なリーバイスの507XXと501XXをセットアップで合わせて、なおかつ足元にはレッドウイングのペコスブーツをコーディネート。 「カテゴリーにとらわれず自由に楽しんでほしい」とも語ってくれた。


マスターシールド生地の
ライディングコート

独自のパターン設計と職人の手縫いによって実現した、襟まわりから肩にかけてなだらかに落ちるシルエットが、このコートの醍醐味。これほどきれいにキマるラグランスリーブのコートは、なかなかヴィンテージショップでは見つからないよ。着丈はLサイズで117㎝。価格は¥208,000(税込)。

そういえば英国軍が放出したミリタリーコートの魅力に、一番最初に気づいたのはフランス人だったらしい。思わずそんな逸話を思い出させてくれた一着が、こちらのライディングコート。きれいなAラインシルエットと、ネイビーの「マスターシールド」によって生まれるドレープ感には惚れ惚れしちゃう。なんだかクリニャンクールの蚤の市あたりで売っていそうな洒落た雰囲気だ。
実はこの日鴨志田さんが着ていたのは、普段より1サイズ上(Lサイズ)のサンプルなのだが、全くもたつきがなく自然なシルエットなのに驚かされる。「ヴィンテージのコートには憧れるけど、シルエットがなあ・・・」と諦めていた方には、ぜひこれを試してもらいたい。

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鴨志田さんならこう着こなす!
汎用性の高いネイビーのステンカラーコートだけど、鴨志田さんはこれをスーツに合わせることはまずない。チェックのジャケットにボーダーシャツ、色落ちしたジーンズ、シルクのスカーフを合わせたカジュアルなこの着崩しは、「あんまり考えずに合わせるとこうなる」スタイルなのだとか。でも、ここにマーベリックのフレアデニムやパーブルのアディダスを合わせちゃうセンスはやっぱりすごい。ぼくたちはまだまだ、鴨志田さんのスタイルを真似したくなっちゃうのだ。



ここがすごい!
超高密度がゆえに針を通すのも大変な「マスターシールド」をここまで端正にキワまで縫えるのは、世界でもSANYOCOAT(サンヨーソーイング青森ファクトリー)くらい? 新品でもとてつもないオーラを漂わせる生地だけど、着込んだあとの風合いもまたすごいんだ。アセテートのサテンを使った取り外し可能なライニングも、実に格好いい。



坂田さんならこう着こなす!
「バルカラーコートにスウェットを合わせるのが好き」という坂田さん。近年人気が高まっているという音楽家プリントのヴィンテージスウェットに、英国軍のミリタリーワークパンツ、ギリーシューズを合わせた、力の抜けたカジュアスタイルを提案してくれた。こんなラフに着こなしても、どこか品よく見えるのが、このコートの魅力でもある。

鴨志田さんと坂田さんも参加!
10月12〜13日に
ポップアップストアを
オープンするよ

2024年の10月12日(土曜)〜13日(日曜)、今回ご紹介したPaul Stuart×SANYOCOATのコラボレーションコートが一堂に会するポップアップストアを開催します! 会場となる神楽坂の「Atelier Mon Oncle」には、鴨志田康人さんと坂田真彦さんも来場されるので(両日15時〜18時頃)、そのコートのこだわりを直接伺えるチャンス。期間内にコートをご購入された方には、鴨志田さんと坂田さんがコートに合わせて選んだヴィンテージのネックウエアをプレゼントしますので、ぜひこの機会をお見逃しなく。イベントの詳細については、「ぼくのおじさん」の記事やInstagramにて、随時ご報告しますので、お楽しみに!

⚫︎日時/10月12日(土曜)〜13日(日曜)
12時〜19時
⚫︎場所/Atelier Mon Oncle
(東京都新宿区水道町1-9 しのぶ荘104)
⚫︎予約/不要
※プレゼントのネックウエアは数量限定となりますので、品切れの際はご了承ください。

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