パパスの特集②
立木義浩が撮った!
「ぼくたちのパパス」
撮影/立木義浩
さてさて、論より証拠ということで、ここらでパパスの格好いいところ、そしてぼくたちにだって似合うところを見せようと思う。そんなテーマのファッションシューティングをお願いしたのは、なんと超大御所フォトグラファーの立木義浩さん! 実は立木さんは、パパスのデザイナーを務めた荒牧太郎さんとは盟友と言っていい存在で、モデルとして何度もカタログなどに登場している、キーパーソンなのである。モデルをつとめるのは、この撮影でパパスを初めて知ったという20代前半の3人組。ちなみに蛇足だけれど、スタイリング担当は「ぼくのおじさん」の編集人。パパスの総本山といえる丸の内店を舞台に繰り広げられた、歳の差優に60を超えるこのフォトセッション。どんな化学反応が起きるかな?
どう着たっていい。パパスの
カジュアルはどこまでも自由だ!
近々ロンドンで暮らすことが決まっている、サッカー好きの雄大。彼には洗いをかけたジージャンと、ジャミーソンズのフェアアイル柄ニット、2タックのチノパンを着こなしてもらった。実はこのジージャン、一見ベーシックに見えるが、インナーに取り外し可能なムートンジャケットをあしらった、贅沢すぎる3WAY仕様。(残念ながら)かなり高価だけれど、ぜんぜん背伸びした雰囲気がないし、20代のぼくたちにだって似合う。まあ問題は価格だけかな!? こういうのを買えるように、向こうでがんばって仕事しよう!
フランス人のお父さんを持ち、モデルとして羽ばたこうとしている陸。ぱっと見はハンサムだけれど、男っぽくてバンカラなムードが魅力の彼には、以前パパスのカタログに登場していたピエール・バルーのように、ラフで無造作なコーディネートがよく似合う。ボーダーのラグビージャージにスウェットパンツ、その上にしなやかなステンカラーコートを羽織って、さらにハリスツイードのジャケットを着てしまうという掟破りのスタイルも、決して頑張っている感じじゃなく、いかにも〝そこらへんに転がっていた服を着た〟風に仕上がるのがパパスの魅力。パパスは今っぽさなんて全く狙っていないと思うけれど、そんなところが今のぼくたちの気分にハマる秘密なんじゃないかな?
3人目は、食をテーマにしたものすごく格好いい紙の雑誌「MCNAI MAGAZINE(マカナイマガジン)」などで活躍する、カメラマンであり動画クリエイターでもある健太郎。ちなみに彼は「ぼくのおじさん」にも関わっている。テクノ好きなクラブキッズにしてクラシックファッションにも興味津々な彼には、ちょっとレトロな英国ツイードのステンカラーコートをコーディネートした。素材はサヴィル・ロウのテーラーが使うような極上ものながら、決して堅苦しくなく、スニーカーにだって合わせられるこちらは、今の彼にはぴったり。パパスはちょっと高いけれど、こんなコートなら就職しても、おじさんになっても、おじいさんになっても着られるはずだ! それとぜひチェックしてほしいのが、キャンバス素材のスニーカー。オールデンのモディファイドラストのような足なりのフォルムで、革靴のようにしっかりと木型に吊り込まれているので、大量生産品とはちょっと格の違うムードなのだ。これはかなり使えそうだよ。
ときには品よく。上質なのに
等身大なジャケットスタイル
ブラックというカラーに加え、襟から裾にかけてパイピングを施したフォーマルなデザインのタキシード調ジャケットも、決して堅苦しく見せないのがパパスの流儀。上質なカシミアをビーバー加工して毛足を立たせた生地を使い、肩パッドや副資材を省くことで、カジュアルにも着こなせる力の抜けたジャケットに仕上げている。実をいうと、前の記事で紹介した、三國連太郎さんが愛用していたジャケットの復刻版である。三國さんとお揃いだなんて、うらやましい。これならタイドアップなんかせずに、同色のタートルネックニットやウールのスウェットパンツと合わせれば〝ぼくたちのフォーマルスタイル〟が完成! 足元にはムートンのブーツを合わせてみたけれど、いかがだろう。次のクラブパーティはこんな格好で行ってみようか?
背が高くてジャケットが似合う体型の陸だけれど、ただキメるだけじゃつまらない。洗いざらした風合いのコーデュロイスーツの下に、なんとスエードのパッチワークシャツを合わせてもらった。で、着こなしの締めはツイードのバケットハットを適当に被れば完璧。スーツだけれど、パンツのクリースなんて気にしない。シャツの裾はしまっても出してもいい。こんな気取らず格好いいやつがパリのビストロにいたら、思わず話しかけてしまいそうだ。なんだか友達になれそうな気がするよ。
今回のフォトセッションのトリを飾る雄大には、スコットランドのハリスツイードを使ったノーカラージャケットをチョイス。ブルゾンのようでもあり、ジャケットのようでもある、という凝ったデザインのこちらに、同じくスコットランドでつくられたジャミーソンズのニットベストとフーディ、コーデュロイのパンツを着てもらったが、ラフでシックで格好よくてかわいくて・・・という実に彼らしい魅力的なスタイルが完成した。しかしパパスは優しくなじむ配色が実にいいよね!
・・・というわけで、パパスを使った6つのコーディネートはどうだったかな? 立木さんの格好いい写真も相まって、今までノーマークだったパパスを、見直したという方も多いんじゃないかな? スタイリングを担当させてもらったぼくから言わせてもらうと、ほどよいゆとりを生かしたレイヤードが楽しめること、優しい色と上質な素材使いが重なり合って、奥行きのある着こなしに仕上がること、サイズが合わなくても雰囲気で着こなせてしまうこと・・・などなど、大きな可能性を秘めた洋服であることを思い知らされた。そして何より魅力的なのは、写真を見てもらえば一目瞭然だけれど、袖を通した瞬間から、あたかも彼ら自身のワードローブであるかのように見えることだ。これはほかのブランドではなかなか味わえない感覚だね。蛇足だけれど、ソックスのバリエーションが豊富なところも気に入った。これがとても大事なんだよ!
パパスだったら、無理にお洒落に見せようとしなくてもいい。無造作に袖をまくり上げても、ちょっとくらい袖やズボンの裾が長くても、アイロンをかけなくても、スープのシミがついてもいい。いや、むしろそのほうが魅力的に見えるかもしれない。最高の素材を使った服ばかりだから、今はまだ背伸びしないと届かないけど、パパスは決して逃げない。煽らない。ぼくたちを裏切ったりしない。だから安心して憧れられるんだ!