2024.11.21.Thu
今日のおじさん語録
「世界はあなたのためにはない。/花森安治」
お洒落考現学
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連載/お洒落考現学

フォレスティエール研究②
オーベルジュ・小林学さんが
再構築した! 本来の
コルビュジエジャケットって
これじゃない?

撮影/山下英介

「ぼくのおじさん」が創刊当初から注目している〝究極のおじさんジャケット〟、アルニスのフォレスティエール。このジャケットに秘められたたくさんの謎を、フランスのヴィンテージウエアに精通する「オーベルジュ」のデザイナー、小林学さんだったらどのように読み解くのかな? そんな思いでお話を伺ったところ、事態は急転直下。自らこの名作をオマージュしたジャケットを開発し、しかも「ぼくのおじさん」仕様の一着まで用意してくれた!

コルビュジエのオーダーを
素直に反映したら?

編集人が所有するフォレスティエール。
小林さんは、パリで遊学していた1980年代後半から、いわゆるフランスのワークジャケットを死ぬほど見てきた方ですよね? この「フォレスティエール」も〝森の番人〟を意味する名前のとおり、もともとはワークウエアをルーツにしたジャケットです。そしてアルニスの歴史においては、1947年に建築家のル・コルビュジエの「黒板に字を描くとき腕を上げやすいジャケット」というオーダーをもとに完成したとされています。そうした視点からこの「フォレスティエール」を見ると、どんなふうに感じるんですか?

小林学 これは誤解しないでほしいんですが、現代の「フォレスティエール」を見たとき、ものすごく直線的な服だったので驚いたんです。

直線的というと?

小林 要するにヨーロッパのワークウエアって、構造線をグイグイいじってビタッと背中に張り付かせて動きやすくする、というパターンが特徴なんですね。それが独特の男っぽさにも繋がっているんです。しかし、この服に関しては、そういった工夫がほぼない。むしろアメリカのカバーオールのように、分量で動きやすくする服だったんです。もちろん、生地や縫製がもたらすオーラは別格ですが。

いわゆるテーラリングの理論では、動きやすい服ってコンパクトなアームホールで表現するものですが、それとも全く逆ですよね。

小林 ほぼシャツ袖なんですよ。なので考え方としては、白衣とかアトリエコートに近いのではないかと。でもこれは、あくまでぼくが見た最近の「フォレスティエール」の話ですよ? 1950年代のモノはまた違うパターンだったのかもしれませんが、ブランドのアーカイブにもないし、ヴィンテージ市場に出てくることもない。

うーん、ますます謎が深まってきました・・・。

小林 だからぼく、去年つくってみたんですよ。もし自分が仕立てる側だったとして、コルビュジエから同じような注文が入ったら、どんなジャケットになるかなっていう想定をして。

小林さんが「フォレスティエール」を再構築してつくったジャケット『FOREST D』。「オーベルジュ」のオンラインストアでは一瞬で売り切れた人気作だ。
徹底的なつくり込みと、ストーリー性を兼ね備えたプロダクトで熱烈に支持される「オーベルジュ」。デザイナーの小林学さんは、「ぼくのおじさん」の理解者のひとりだ。今はまだ明かせないが、ものすごいコラボレートも進行中なので、ご期待あれ!
おお! オーベルジュ流『フォレスティエール・解』もしくは『シン・フォレスティエール』ですね(笑)!

小林 輪郭自体はあまりいじってないのですが、ポイントは、100年前のフレンチハンティングジャケットに用いられていた〝ピボット・スリーブ〟です。アームホールに見えないマチを入れることで、猟銃をかついでもスムーズに腕が動かせる。もちろん黒板に字を書くときも、全くストレスは感じません。

こちらが「ピボットスリーブ」。腕を下げたときには、このゆとりは見えなくなる。
重たい生地を使っても、ものすごく快適に腕が上がりますね!

小林 その由来や目的を素直に反映させるならば、本来はこういうものだったではないか? こういうものであるべきだったのでは? と思っています。

生地はどんなものなんですか?

小林 これがまた強烈な仮定をもとにつくった素材で(笑)、「もし19世紀後半に、フランスのオートクチュールブランドがデニムをつくっていたら、どんなものだったんだろう?」という想像のもとにつくった生地です。

肉厚な生地だが、アメリカンデニムのような荒々しさはなく、ねっとりした肌触りとほのかな光沢感が特徴。
かなり肉厚ないわゆるヘヴィオンスのデニムですが、ゴワゴワという感じでもなく、肌触りがちょっとねっとりしていますし、ちょっとキラキラ光ってますね。

小林 そう。フレンチワークの定番といえば綿麻なんですが、これはそれに性質の違うシルク糸を巻き付けるような手法で織った生地です。このねっとり感や、夜空の星のようにキラキラ光っているのは、シルクの性質なんですよ。

手触りも表情も、とんでもなく〝深い〟ですね。

小林 ぼくが今までのキャリアでつくったデニムの中でも、トップクラスに高額な生地です。正直言わせてもらうと、現代のラグジュアリーブランドも、せっかくデニムをつくるなら、ここまでつくり込んだらいいのにって思いますよ。今は全く面白くないので。

着込んだらどんな具合になるんですか?

小林 このふくらみ感やねっとり感はそのままに、もっと柔らかく、そしてシルクの光沢がどんどん出てくると思います。

それは楽しみだなあ。これ、「ぼくのおじさん」の読者はめちゃくちゃほしいと思います! まだ「オーベルジュ」で買えるんですか?

小林 いや、うちではもう売り切れてしまったんです。取扱店でもほとんど売り切れているんじゃないかな? でもせっかくなので、サンプル用に残しておいたピースを「ぼくのおじさん」用にキープしましょうか。

それはすごい! 

小林 たった数点なので、「ぼくのおじさん」のスペシャル仕様として、ぼくが今までパリで集めてきた、100年くらい前のフレンチヴィンテージのメタルボタンもランダムにあしらってみましょう。次のシーズンはつくっていませんし、ほかでは絶対に買えないですよ。ついでと言ってはなんですが、同じデニム生地を使ったジーンズ『JARDIN FR』の在庫も、この機会にちょっとだけ販売しちゃいましょう! 

小林学さんが長年かけて収集したヴィンテージのメタルボタンを大放出! アソートなので、どれがついてくるかは小林さんにお任せあれ。
こちらは同じシルク混デニム生地を使ったジーンズ『JARDIN FR』。今はなきフランス最古の百貨店「ベル・ジャルディニエーエル」が遺したアーカイブピースをもとにアップデートさせたモデルだ。ガバッと深めな股上ながら、極上生地のなせるわざか、それほどワークテイストは感じさせず、どこか上品な印象だ。ボーダーシャツやシャルべのシャツあたりに合わせてはくと、きっと格好いいだろうな。
「オーベルジュ」がつくって「MON ONCLE ぼくのおじさん」のためにアレンジしてくれた『フォレスティエール・解』! これは貴重だなあ。各サイズ1点ずつなので、「ぼくのおじさん」のオンラインストアをぜひチェックしてみてください!
こんなフレンチテイストの着こなしに猛烈に映える『フォレスティエール・解』こと『FOREST D』の別注モデル。ぜひオンラインストアをチェックしてほしい。

●『FOREST D』の詳細はこちらから。
※おかげさまで完売しました。

●『JURDIN FR』の詳細はこちらから。

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